ご相談窓口

障がい者問題

ゆ~とさん
障がい者問題についての、よくあるご質問です。
ご相談の前に、ご確認ください。

【障がいに対する対応】私の身内の者が精神障がいの診断を受けました。入院するしかないのでしょうか。
精神障がいのある人の場合、本人が受診して適切な医療を受けることが必要ですし、場合により入院による治療を受けることが必要なこともあります。しかし、「すべての精神病者は可能な限り地域において生活し働く権利をもっている」( 1991.11.29国連総会-「精神病者の保護及び精神保健ケアの改善」に関する決議-)のであり、特に必要性がない場合にまで入院する必要はありません。医療機関や保健所等の相談窓口に相談のうえ、入院の必要性があるか相談することが先決です。
また、精神障がいのある人の地域生活を支援する上では、医療と福祉が共同してその生活を支え、環境を整備することが重要です。障害者総合支援法において、相談支援事業所が各市町村に設置されていますので、福祉サービスの利用・環境調整についての相談をしてみてはどうでしょう。
【逮捕されたら】障がいのある身内の者が逮捕されてしまいました。何もわからず心配です。
逮捕には、現行犯逮捕、裁判所の逮捕状に基づく通常逮捕、緊急を要する場合で一定の条件がある場合に逮捕される緊急逮捕の3つがあります。いずれの場合も、逮捕されてから最大72時間(3日間)、警察の留置場に入れられます。さらに、裁判所が拘束することを認めた場合には、引き続いて最大20日間身体が拘束されます。犯人と疑われ逮捕された人は、逮捕されたときに、弁護人を呼んでもらうよう求めることができます。裁判所が拘束することを認めた後は、一定の事件について、国選弁護人をつけてもらうこともできます。犯罪をしたと疑われているといっても、その人が犯人とは限りませんし、仮に犯人であるとしても、事件については色々と言い分がある場合があります。警察官や検察官による取調べについて、弁護士からなるべく早くアドバイスを受ける必要があります。
障がいのある人の場合は、判断能力やコミュニケーション能力が不十分な人も多いので、1.誘導などによって嘘の自白調書が作られないよう、警察官や検察官にその人の障がいの特性を理解してもらう必要があります。また、2.その人の障がいに配慮し、拘束場所である留置場などでの対応の改善を求めたり、身体拘束から早く解放されるようすることも必要になります。
このようなことをするためには、弁護士のアドバイスや活動が重要です。日弁連では、逮捕された本人あるいはその親族・知人からの求めにより、警察署など本人の身体が拘束されている場所に弁護士を派遣します。最初の面会費用は無料です。
なお、東京三弁護士会では、2014(平成26)年4月から、知的障がい者等の刑事弁護において、障がい者の対応をするための研修を受け、名簿登録された弁護士を派遣するという制度が始まっています。詳しくは、「もし、逮捕されたら?」をご覧ください。
なお、本人が20歳未満の場合には少年事件となり、成人とは別の手続きで処分が行われますが、この場合にも弁護士を派遣する制度が弁護士会に設けられていますので、お問い合わせください。
【精神鑑定】被疑者、被告人の精神鑑定はどうして行うのでしょうか。
刑法39条は、精神の障がいなどによりものごとの善いことと悪いことを判断したり、その判断に従って行動することができない状態にある人がしたことは処罰しない(無罪)とし、また、そのような判断をする力が著しく低下している状態にある人がしたことについては、一般の人が同じことをした場合に比べてより軽い刑で処罰するとしています。善悪を判断する力が十分ある人が、意図的にあるいは不注意で法律に違反する行為をすれば、社会から非難を受け、刑罰を与えられます。判断する能力がないとか著しく低下している人は、自分がしていることの意味を十分に理解できませんから、法律を守って行動するよう求め、非難して処罰するのは難しいです。精神鑑定は、犯罪行為をした人の判断能力の状態がどのようであるかを調べるために行うものです。ただし、精神障がいがあるからといって、当然に判断能力がないとか著しく低下しているということにはなりません。精神障がいのある人の多くは日常生活を普通に送ることができます。精神障がいのある人が、一律に判断能力がなく、処罰されない人だということではありません。
【知的障がいのある人と罪の意識】知的障がいのある人が、取調べのときに、自分のしたことは悪いことだと答えれば、一般の人と同じような刑で処罰されるのでしょうか。
知的障がいのある人がたとえば窃盗をした場合、自分のしたことはよいことかどうかと聞くと、それは悪いことと答える場合があります。
本人が、その行為が「悪いこと」と言ったから、本人は善いことと悪いことの判断をする力が十分にあるから責任を問うことができ、処罰をすることができるかというと、直ちにそうであるということはできません。本人は、もしかすると、これまでの生活の中で教えられてきたままに、だめなことはだめというような結論だけを機械的に言っているだけかもしれません。
知的障がいのある人は、抽象的に考えることがうまくできません。悪いといっても、その意味をどのように理解しているのかを考えてみる必要があります。人の物を盗めば警察につかまるということや、刑務所に入れられるのは悪いことをしたからだということが分かっていたとしても、悪いことをすることの社会的な意味、その結果が周囲に与える影響などを考える能力が不十分で、自分の欲望に駆られるままに犯罪をしやすく、自立して社会生活を送れないというような人もいます。知的障がいのある人について、裁判で、ものごとの善いことと悪いことを判断したり、その判断に従って行動する力が著しく低下していると判断されれば、一般の人が同じことをした場合に比べてより軽い刑で処罰されることになります。ものごとを抽象的、論理的に考える能力がどの程度あるのかということは、鑑定により、医学などの専門家の意見を聞きながら判断することになります。
【知的障がいのある人の特性】知的障がいのある人はどのような特性があるのでしょうか。
知的障がいのある人には、いくつかの特性があり、そのことが十分に理解されないと、取調や裁判のときに、反省していないとか危険な人であると受け止められ、判決で思いもよらない刑罰を受けるおそれがあります。知的障がいのある人は、
1.抽象化、一般化することが苦手です。
どうしてと理由を聞かれたり、どれくらいという量や程度を聞かれてもうまく答えられません。具体的な事実を1つ1つ確認していかないと、事実の判断を誤ることになります。
2.計画や見通しを立てることが苦手です。
先のことをいくつも聞いても頭の中に入りません。理解でことから1つずつ話したり絵や写真など視覚で理解できるようにして話をしていくことが必要です。
3.コミュニケーションを取ることも苦手です。
これまでの生活で、自分を否定されてきた(お前はだめだ、人の言うことに従っていればいい等)ため、自分に自信がなく、人に合わせる生き方をして来ている人は多くいます。取調のときに強い口調で尋問されたり、誘導尋問や特定の答えを期待されているような態度で質問をされると誘導に乗ったり、尋問者の意向に沿った話をしてしまいがちです。
知的障がいのある人にはこのような特性かありますから、取調のときからこのような特性を理解して、間違った事実確認がされないようにする必要があります。本人の述べたことが法廷に証拠として提出される場合、それは質問者のどのような質問と態度に対してそのような答えがされたのかという具体的な取調の状況と一緒でなければ、本人の述べたことが信用できるかどうか判断できません。
検察庁では、知的障がいのある人のこのような特性を考え、知的障がいによりコミュニケーション能力に問題がある人を取り調べる場合は、取り調べの過程を録音・録画し、心理・福祉関係者に取り調べに助言や立会をしてもらうことを試行的に取り組んでいます。